RQI (Resuscitation Quality Improvement) 蘇生の質の向上
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心肺蘇生の質を改善するためのプログラム
クオリティ
ほとんどの医療従事者は日常的な診療の中で、CPRを行うような機会に遭遇することは滅多にありません。また、実際に年に1、2回のトレーニングを受けたあとで、さらにCPRトレーニングを行う人も多くはありません(1)。CPRの胸骨圧迫と人工呼吸のスキルは実施しなければトレーニングから、わずか3ヵ月で低下し、そのためCPRの全体的な質まで低下することが報告されています(2)。.
コンプライアンス
医療機関はどんな方法でCPRの質を確保し、プロトコルの遵守を示すことができるのでしょうか?現在、医療従事者は日常的な忙しさに加え、組織内外への報告に必要な履修状況を照合し、確認し、資料を作成することに多大な時間を費やしています。
コスト
現行のCPRトレーニング方法では、施設外のトレーニングに参加するスタッフ、インストラクターの費用などの直接経費だけでなく、医療従事者が病棟やベッドサイドで患者をケアする時間の減少といった間接経費も発生しています。
RQIは、短時間のトレーニングを定期的に受けるプログラムです。 この方法によりCPRスキルを保つことができると証明されています。
Low-dose high-frequencyトレーニングとは?
平均10分で完了する4半期毎のトレーニングです。受講者は、胸骨圧迫と換気を行い、音声及び視覚的なリアルタイムのフィードバックを受けることで、実施しているCPRの質を確認できます。
小児科での研究では、短時間のトレーニングを頻繁に受けることで、質の高いCPRスキルの維持が2倍以上になることが示されています(3)。
更に施設内のアクセスしやすい場所にRQIステーションを配備することによって、24時間いつでもトレーニングが可能になります。
RQIは専用の学習管理や分析などの強力なデータ管理ツールも含まれています。これにより学習者へ手技のリアルタイムフィードバックに加えて、管理者が部門別、および個人別の成績データのトラッキングや分析も可能になります。このレポートは、監査、管理レポートの作成にも役立ちます。また品質改善が必要とされる箇所も顕在化させます。
RQIによるトレーニングは、学習者が自ら行うトレーニングです。そのため、医療従事者は、時、場所を選ばずに自分のスケジュールに沿ったトレーニングを行うことができます。既に実施されているRQIプログラムのデータによれば、トレーニングは、24時間どの曜日でも行われており、そのピークタイムはシフト交代時となっています。
また、外部インストラクターや内部インストラクターに対する時間とコストも削減されるので、基本スキルの取得に時間をかけずチームトレーニングやリスクマネージメントに時間を割くことができます。
毎年1,000名のスタッフがそれぞれ一次救命処置トレーニングに年間3時間半の時間を費やしているとします。RQIプログラムを導入すると、トレーニング時間を一人あたり最低1時間減らすことができます。これは年間1,000時間の削減です。
つまり、この1,000時間を患者のケアに使うことができるようになります。
ダラスのTexas Health Resources (THR)病院でRQIプログラムを実施した2年後に、同病院は以下のことを達成しました。
・四半期の課程を98%完了
・CPRの研修費用を25万ドル節減
・生存率が21%増加
THRのスタッフは現在もこのRQIプログラムを利用しており、従来の教室でのトレーニングを希望する声はありません。なぜならこのプログラムがCPRの質を改善するという彼らの必要性を満たしているからです。
全豪医療安全品質(National Safety and Quality Health Service: NSQHS)基準を満たすため、オーストラリアのCabrini Healthは、医療従事者全体にRQIを展開しています。その結果、彼らは院内適性認定において“Met with Merit”(実績のある適合)という評価を受けました。
Matt Johnson, 臨床教育ディレクター, Cabrini Health, Malvern Victoria州 オーストラリア
Paramedic exposure to out-of-hospital cardiac arrest is rare and declining in Victoria Australia. Dyson et al. 2015. Resuscitation 89, 93-98.
Part 16: Education, Implementation, and Teams 2010 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care. Bhanji et al. Circulation. 2010;122(suppl 3):S920-S933
Low-Dose, High-Frequency CPR Training Improves Skill Retention of In-Hospital Pediatric Providers. Sutton et al. Pediatrics. 2011;128:e145-e151